第16回
- 講演者:大坂 博幸 氏(立命館大学)
- 題目:\(C^*\)-環の局所性と分類問題について
- 日時:平成21年12月7日(月)16:30〜17:30
複素数体 \(\mathbb{C}\) 上の代数 \(A\) で, 任意の \( x,y\in A \) に対して \((xy)^*=y^*x^*\), \((x^*)^*=x\) を満たす *-演算 \(A\ni x\to x^*\in A\) を備えたものを *-環といい, *-環 $A$ 上の完備なノルム \(\|\; \|\) が任意の \(x,y\in A\) に対して \(\|xy\|\leq \|x\|\|y\| \) と \(C^*\)-条件 \(\|x^*x\|=\|x\|^2\) を満たすとき $A$ を \(C^*\)-環という。 複素Hilbert空間上の有界線形作用素全体 \(B(H)\) は共役写像 \[ \langle x^*\xi ,\eta\rangle = \langle\xi ,x\eta\rangle \quad (x\in B(H),\xi ,\eta\in H, \langle\;,\;\rangle\; :内積) \] を *-演算として, 作用素ノルム \( \|x\|=\sup{\|x\xi \|:\xi \in H,\|\xi \|\leq 1}\) をノルムとする \(C^*\)-環である。
$X$ を局所コンパクトハウスドルフ空間としたとき, 無限遠点でゼロとなる複素数値連続関数全体からなる関数環 \(C_0(X)\) は \(f^*(t)=f(t)^{‾}\) を \(C^*\)-演算, \(\|f\|=\sup\{|f(t)|:t\in X\} \) をノルムとして持つ可換な \(C^*\)-環である。 逆に, 任意の可換な \(C^*\)-環は, ゲルファント変換により適当な局所コンパクトハウスドルフ空間 $X$ 上の関数環 \(C_0(X)\) に実現できる。
関数環と行列環のテンソル積からなる \(C_0(X)\otimes M_n(C)\) の有限直和からなる \(C^*\)-環(basic buildingと呼ぶ)の帰納的極限から生成される \(C^*\)-環をAH環と呼び, 現在 \(C^*\)-環のトピックの1つであるElliott分類問題のモデルとなっている。 \(C\) を単位元をもつ \(C^*\)-環で性質 D をもつ集合であるとき, \(C^*\)-環Aが局所C性質をもつとは, 任意の有限集合 \(F\subset A,\; \epsilon>0 \) に対してある \( B\in C\), あるunital *-homomorphism \(\phi:B\to A\) で, \(\mathrm{dist}(\phi(B),F)<\epsilon \) を満たすことをいう。
例えば, AH環Aのbasic building における全てのXが1点からなる集合であるとき, \(C\) を単位元を持つ有限次元 \(C^*\)-環からなる集合とすると, \(A\) は局所C性質をもつことが知られている。 このとき, \(A\) はAF環(approximately finite dimensional \(C^*\)-環)と呼ばれる。 しかし, 必ずしも局所AH性をもつ(つまり局所的にAH環で近似できる) \(C^*\)-環はAH環にはならない。 この講演では, 「どのような局所的な性質が \(C^*\)-環全体の代数構造を決定するのか?」, あるいは, 「どのような \(C^*\)-環が局所性を持つのか?」, について議論をする。また, Elliott分類問題との関連についてもふれる。
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