第01回 三原 朋樹
abstract
完備なノルムを備えた環をBanach環と呼ぶ。任意の環は自明なノルムに関してBanach環をなすため、Banach環は環の一般化である。 今回はある付加構造を備えたBanach環の族を考え、そのBanach環としての直積や、それを完備直和で割った商環の極大イデアルについて代数的かつ解析的かつ幾何的なアプローチで調べた結果を紹介する。 この構成で現れるBanach環の例としては、各種ゼータ値の研究で用いられる環Aや漸近的数のBanach環、強0次元位相空間Xとアルキメデス的完備付値体kに対する有界連続関数X→ kのBanach環やそれを無限遠で消える関数のなすイデアルで割った商環、位相空間Xと非アルキメデス的完備付値体kに対する有界連続関数X →kのBanach環やそれを無限遠で消える関数のなすイデアルで割った商環、等が挙げられる。 主な結果として、こういったBanach環に対して極大イデアルが極小素イデアルである必要十分条件を極大スペクトルの位相的な性質で特徴づけた。 系として、いくつかのBanach環のクラスに対して、それらに属する任意のBanach環が極大イデアルであって極小素イデアルでもあるものを持つという命題がZFCと独立であることが従う。
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