第13回
- 講演者:伊山 修 氏 (名古屋大学)
- 題目:クラスター傾斜加群
- 日時:平成18年10月31日(火)16:30〜17:30
多元環の表現論の主問題として、体上の有限次多元環 \(\Lambda\) の有限生成加群を分類する事が挙げられる。 最も簡単な場合として、 \(\Lambda\) が有限個しか直既約加群を持たない時、有限表現型と 呼ぶ。次の定理は、Auslander-Reiten理論の一つの原型を与えるものである。
定理(Auslander,1971)
有限表現型有限次多元環\(\Lambda\) の森田同値類全体と、 大域次元が $2$ 以下でdominant次元が
$2$ 以上の有限次多元環Γの 森田同値類全体の間に一対一対応が存在する。 対応は、\(\Lambda\) に対して、
全ての直既約 \(\Lambda\)-加群の直和を \(M\) とした時、 \(\Gamma := \mathrm{End}_{\Lambda}(M)\) により与えられる。
この定理は、後の有限表現型理論で重要な役割を果たしたものであるが、講演ではこの定理の類似を扱う。 具体的には、 大域次元がn以下でdominant次元がn以上の有限次多元環全体を考えた場合、 何か有限表現型多元環のような、良い対応物が 存在するか考察すると、 表題にあるクラスター傾斜加群と呼ばれる加群の同値類全体が対応する事が分かる。
クラスター傾斜加群は、Buan-Marsh-Reineke-Reiten-Todorovに よって導入されたクラスター圏との関係からも調べられており、 名称は Keller-Reiten による。 講演では、 クラスター傾斜加群の例として、有限次多元環の他に、 \(\mathrm{SL}_d(k)\) の有限部分群 \(G\) の不変式環 \(\Lambda :=kx_1,...,x_d^G \) に付随するものを紹介する。 また面白いことに、 傾斜加群の場合(Happel, Rickardの定理)と同様に、 クラスター傾斜加群も導来圏同値と関係している事も述べたい。
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