Euclid空間の中心対称な凸体とその極凸体の体積の積はMahler体積(volume product)と呼ばれ、Minkowskiの「数の幾何」のMahlerによる研究において導入されたものである。数論への応用を離れて、凸幾何では凸体の集合上の汎関数としてのMahler体積のふるまいに興味がある。Mahler体積の上からの評価はBlaschke-Santal¥'o不等式としてよく知られており、凸体が楕円体の場合に限りその最大値をとる。一方、下からの最良評価は2次元の場合にMahlerにより1938年に与えられたが、一般次元では未解決であり、Mahler予想(1939年)と呼ばれる凸幾何の分野での古典的問題の一つである。本講演では、柴田将敬氏(名城大学)との共同研究で解決したMahler予想の3次元の場合(2020年)を中心に、以下のプランで解説したい。
(1) 2次元の場合(Mahlerの定理)の証明
(2) 3次元unconditionalの場合のJ. Saint-Raymondの定理のM. Meyerによる別証明
(3) 3次元一般の場合の証明の概要
※ 今回は理工学部数学科談話会との合同開催となります。
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