Bernoulliの自由境界問題とは円環状領域上の調和函数に関する過剰決定問題であり, 一方の境界を固定した上で,与えられた Dirichlet および Neumann 境界条件の双方 をみたす調和函数が存在するためのもう一方の境界の形状を問うものである. 本問題の解(すなわち自由境界)には楕円型および双曲型という異なる二つの解の 型が現れ,前者は安定であり後者は不安定である. 本講演では微分喪失構造を有する問題へ適用可能な新しい陰函数型定理を証明する. 証明は従来の逐次近似法ではなく,付随する発展方程式を導出し,最大正則性の理 論によってそれを解くことを基礎とする. 定理の応用として Bernoulli の自由境界問題の葉層構造をもつ双曲型解の構成を行う.
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