単位円板 $\mathbb D$ 上のハーディ空間 $H^2({\mathbb D})$ には通常の多項式掛け算を作用として多項式環係数の加群構造が入る。 古典的な Beurling の定理とは $H^2({\mathbb D})$ の部分加群(閉であることは仮定する)を inner function と呼ばれる関数により記述するものである。 この定理は関数論とヒルベルト空間上の作 用素論とを結び付けただけでなく、一般的な作用素の構造論と深い関係があることが 知られている。
一方、(複素)多変数ハーディ空間では部分加群の構造は極めて複雑になることが知られている。 例えば、$H^2({\mathbb D})$ では部分加群は常に単一生成であり、すべて加群として同型だが、 多変数では、有限生成でない部分加群が存在する、同型で ないものがたくさん存在するなどといった古典的な場合とは大きく異なる現象が現れる。
今回はこの多変数における研究の概説を与える。
[<6>]