本セミナーは,東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 「数理モデリングと数学解析研究部門」との共催です.
概要: 本講演では,外来種侵入問題のモデルとしてDu-Lin(2010)により提唱された次の 形の反応拡散方程式の自由境界問題を考える:$u_t=u_{xx}+f(u)$, $t>0$, $0<x<h(t)$ $h(t)$ は時間に依存する境界で $u(t,x)$ とともに未知関数である.$h(t)$ は $h'(t)=-\mu u_x(t,h(t))$ というStefan条件によって決定される.この問題は $u(t,x)$ と $h(t)$ がともに未知関数であり,その両方を同時に求める問題である。 最近,反応項 $f$ が常微分方程式の意味で安定な正の平衡点を2つもつ positive bistable型とよばれる場合,Kawai-Yamada(2016)は広義一様収束 の意味で解の漸近挙動の分類を行い, 生物種の侵入の成功を表すspreadingについて, それぞれの安定平衡点に広義一 様収束する2種類のspreading(small spreading と bigspreading)が 起こることを示した. 本講演の目的は上で述べた2種類のspreadingに対応する解について, $t\to\infty$ において $u(t,x)$ の定義域 $[0, h(t)]$ 全体での漸近的形状を 調べることである. 特に,ある条件のもとで,特に0と小さい正の安定平衡点を結ぶsemi-waveと, 2つの正の安定平衡点を結ぶ進行波を積み重ねたpropagating terraceとよばれ る形状をもつ解に漸近することを紹介する。 証明は比較関数の構成と収束の議論からなるが,その流れについても紹介したい。 本講演は兼子裕大氏(日本女子大学),山田義雄教授(早稲田大学)との共同研 究に基づく.